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調査・質問内容

“おはぐろ”の歴史や由来について知りたい。

図書館からの回答

公開日 2021/01/28

“おはぐろ”とは歯を黒く染める風習のことです。
起源は古代までさかのぼり,日本各地に伝説が残されています。
例えば,岩手県では妊婦が食べる山ブドウがあり,食べると歯が黒くなるので結婚前の娘たちは食べませんでした。そこから歯が黒い・白いことが既婚と未婚との区別になり,歯を染める風習が始まったとされています。
福岡県では赤ん坊の目には母の眉は角,歯は牙のように見えるという言い伝えから眉を剃り,歯を黒く染めるようになったとされています。
他にも,南方の原住民から伝来した説など諸説あります。

平安時代には上流階級の女性の化粧風俗として定着し,平安末期以降は公家や上流階級の武士など男性の間にも流行しました。
室町時代以降は男女ともに成人の通過儀礼として行われましたが,江戸時代になると男性では公家のみに残る一方,女性では庶民層にまで広がり,婚礼の前後につけることが増えました。
明治3年(1870)に文明開化政策の一環として華族のおはぐろが禁止されたことをはじめに,地域差はありますが,明治30年代以降に“おはぐろ”の習慣が廃れていったと考えられています。

現在では,舞妓が芸妓になる前の数日間に“先笄(さっこう)”という髪型に結い,おはぐろをする風習が残っています。

参考文献

タイトル 注記
「お歯黒」の研究 p97~113“第五章 お歯黒と通過儀礼”,p113~125“第六章 五倍子と鉄漿”
化粧ものがたり p207~247“ 4 お歯黒”~“ 10 おわりに”
化粧 p271~279“女子の元服と涅歯”,p279~283“「はぐろめ」から「おはぐろ」へ
化粧の日本史 p74~78“表示機能を持った黒の化粧”,p86~95“消えゆく化粧,お歯黒とそり眉”
江戸三〇〇年の女性美 p28~31“お歯黒”
花街と芸妓・舞妓の世界 p110~111“和の化粧”

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