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京都市中央・右京中央図書館長からのメッセージ
図書館が図書を蒐集,閲覧に供する以上,図書なくして図書館はありえません。そしてまた,文字がなければ図書はできません。
ところが現代においても,文字をもつ言語は世界中の言語の20パーセントにしかすぎません。書物が身のまわりにごろごろしているといった,もうほとんど当り前のわれわれの風景は,じつはきわめて高度で選ばれた社会の現象なのです。
そのように貴重な文字によって書かれた図書なのに,最近は「文字離れ」だの「本を読まなくなった」だのと騒がれています。ここでもう一度,文字や図書の文明における価値を思い起こしてみるべきではないでしょうか。
人間の,文字をめぐる行為は「書くこと」と「読むこと」です。人間は書くことによって精神を成熟させ,心を豊かにし,思考を緻密にします。その結果でき上がった図書を読むことは,贅沢なまでに多数の人の感情や思想を我が物とします。「読む」と「呼ぶ」とは本来同一の行為だという説があります。書物を読むことは著者に向かって呼びかけ,著者の心を呼び出すことなのです。考えただけでも,心躍る行為ではありませんか。
皆さん,書物を開いて著者に呼びかけてみましょう。どう質問すればどう答えてくれるか,楽しみですね。ですから声を出して呼ぶ−読むのが,もっとも有効かもしれませんね。
京都市中央図書館
右京中央図書館
館長 中西 進
中西 進(なかにし すすむ)
1929年東京都生まれ。東京大学大学院博士課程修了。文学博士。奈良県立万葉
文化館館長,田辺聖子文学館館長,国際日本文化研究センター名誉教授。
1963年,博士論文『万葉集の比較文学的研究』により第15回読売文学賞を受賞。
以後,古代文学の比較研究を中心に日本文化の研究・評論活動で知られる。
成城大学教授,プリンストン大学客員教授,大阪女子大学学長,京都市立芸術大学
学長などを歴任。
2004年文化功労者。2005年瑞宝重光章受章。
2007年4月より京都市中央図書館長に就任。
2008年6月より京都市右京中央図書館長に就任。
著書に『傍注万葉秀歌選』(全3巻・四季社),『日本人こころの風景』(創元社),『中西
進万葉論集』(全8巻・講談社),『中西進 日本文化をよむ』(全6巻・小沢書店),
『ひらがなでよめばわかる日本語のふしぎ』(小学館),『日本人の忘れ物』(全3巻・
ウェッジ),『中西進著作集』(全36巻・四季社)など多数。
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