■京都市久世ふれあいセンター図書館長からのご挨拶
久世ふれあいセンター図書館長 東條朝一
「久世ふれあいセンター」は,ホールや会議室などを備えた,久世地域のコミュニティセンターです。当館はその1階北側にあり,曲線をえがいた広いガラス窓とフローリングの床が特徴の明るい図書館です。蔵書冊数は4万冊ほどと,他の京都市図書館と比べると若干小さめです。
しかし,京都市図書館全てが(電子的にも物流的にも)ネットワークで繋がっている現在では,京都市全館の蔵書180万冊余りを一体のものとして利用できるので,蔵書数の少なさというのは,それほどハンディではありません。いわば180万冊のバックヤードを備えた,フロント部分として,全体を見渡せる目配りの利いた蔵書構成で,利用しやすく満足度の高い図書館づくりが可能です。当館はそうした,本との新鮮な出会いのある良質な図書館を目指しています。
久世ふれあいセンター図書館が開館してからこれまでの期間は,京都市図書館のICT(情報通信技術)が大きく進んだ時期と重なります。久世ふれあいセンター図書館が開館した1998年は,京都市図書館全館オンライン化5か年計画の2年目で,中央図書館をはじめいくつかの地域図書館とオンライン化されているにすぎませんでした。3年後の2001年に京都市図書館全館のオンライン化が完了し,全館がネットワークでつながります。
翌2002年にインターネットで所蔵情報を公開し,2006年にインターネットでの予約受付開始,2007年にはケータイからも予約受付を開始しました。これにより家庭のパソコンやケータイから,蔵書を検索し,受取館を指定して予約をかけることが,簡単にできるようになりました。さらに2008年には,CD・DVDの予約・取り寄せも可能になります。
少し前まで,紙の目録カードを繰っていたことを思うと,隔世の感がありますね。
さらに,これから図書館には,もう一段大きな変化が訪れようとしています。
これまでの変化は,急速なコンピュータ化とそれによってもたらされたネットワーク化によるものでした。これからやってくる変化は,本そのものが変化することによってもたらされるものです。
今,本は紙の印刷体から電子書籍へと変化しようとしています。今までも文字の支持体は,石,木,パピルス,羊皮紙,紙へと変化してきた歴史があります。電子書籍というと違和感を持つ人も多いと思いますが,すでに現実には,多くの人にとって日常目にする活字は,紙に印刷されたものよりも,ケータイやパソコンのディスプレイで見るものの方が多くなっているのです。
2009年以降,有力メーカーから次々に電子書籍端末が発売され,新しく雑誌や新聞,電子書籍の配信サービスが開始されています。電子書籍はいわゆるCDブックのようなパッケージとしてではなく,電子データとして流通するので,従来のような資料の収集・保存・貸出といった図書館の業務は根底から変化するはずです。
紙の本から電子書籍への移行が,ゆっくりと進むのか,急激に進行するのかはっきりと見通せませんが,どちらにしろ大部分の紙の本は電子書籍へ置き換わってゆくと思われます。並行して,国立国会図書館やGoogleが行っているような,過去の膨大な量の本を電子化する作業も進められるでしょう。
長い間,図書館は紙の本を収集・保存し利用に供することを主要なミッションとしてきました。紙の本が電子書籍に置き換わった時,図書館はどう変化しているのでしょうか。家庭にいながら誰もが簡単に,過去のあらゆる書籍に収められた知識を,縦横無尽に検索して,瞬時に利用できるとしたら,図書館の存在意義はあるのでしょうか。
と,図書館の将来に不安を覚えるものの,電子書籍は普及の端緒についたばかりです。本(とともに社会)が変化してゆく中で,図書館に求められる役割もはっきりしてくるでしょう。変化を感じて,求められる図書館へ進化すること。これからの図書館が進む道だと考えています。
生き残るのは,最も力の強い種でも,最も知性的な種でもなく,変化に最も敏感な種である。― ダーウィン |